えんだより2021年6月分

「敵を愛し、
自分を迫害する者のために祈りなさい。」
<マタイによる福音書5章44節>

「小さなおみやげ」

 春も終わりに近づき、植物が一番元気になる
季節がやってきました。私の家では春先に植えた
藤の種がやっと芽吹き、初々しい小さな葉っぱを
広げています。小さな命が健やかに育ってゆく
様子を見うるのは、本当に幸せなことだと思います。
 実はこの種は、私が休日にある公園に遊びに
行ったとき、駐車場に生えていた野生の藤から
拾ったものです。パシッ!バラバラ……という音
がするのでびっくりして顔を上げてみると、
頭上から次々と藤の種が降ってきました。
しばらく見ていても拾う人はなく、現に
たくさんの種がタイヤに轢かれて割れています。
 どうせ駄目になってしまうのなら子どもたちに
見せてあげたいと思い、妻と二人で拾ってみたところ、
紙袋いっぱいの種を集めることが出来ました。
(通行人の「あの人たちまだ拾ってる……」と
いう視線は、子どもたちを喜ばせたい気持ちが
勝って気になりませんでした。)
園で子どもたちに見せると、思っていた以上に
喜んでくれて、拾っていた時の腰痛が吹き飛んだ
ことを覚えています。
 しかし不思議なことに、「私は3個ちょうだい」、
「僕は5個ほしい」といってみんな藤の種を
とても欲しがるのですが、たくさん欲しがるわけ
ではないのです。「もっとあげようか?」と
訊いても、3個でいいと言って3個だけポケットに
そっとしまいます。しかし子どもたちの様子を
見ているうちに、なぜたくさん欲しがらないのか
という謎は解けました。子どもたちの欲しいと
いった種の数は、その子の家族の数なのでした。
 大切な人ひとりひとりに一つずつ、今日
見つけた素敵なものをあげたい。なんて心優しく
慎ましいプレゼントなのでしょうか。必要な分
だけで満足し、さらにそれを分かち合うことが
出来るのは、大人でもなかなか難しいことです。
子どもたちが、この朗らかな気持ちを保ちつつ
健やかに成長することが出来るように、
いつも願っています。

 

聖句
「敵を愛し、
自分を迫害する者のために祈りなさい。」
<マタイによる福音書5章44節>

讃美歌 「ぱらぱらおちる」「おそいくるライオン」

今月の歌 「あめふりくまのこ」

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