えんだより2004年5月分

わたしは良い羊飼い。
<ヨハネによる福音書 10章14節

子どもたちの笑顔の輝き!
もう、サクラが散ってから、ずいぶん日が経ちました。
朝日幼稚園の入園式の日は、サクラが満開であったことを思い出します。
あの日から、もうちょうど1ヶ月が経ちました。
朝日幼稚園の園庭のチューリップの花びらも、少しずつその手を広げ、
中にはもう花びらがないものまで、あります。
1ヶ月という時が過ぎ、季節は静かにではあっても、
たしかに移り変わってきているのです。

 私たちは、この春の1ヶ月間という時間の長さを、そのような自然をとおして、
目をとおして肌で感じながら、実感として知ることができます。
そして、新入園児(たんぽぽさん)も、すみれさんも、ばらさんも、
この1ヶ月を過ごし、同じ朝日幼稚園の空気を吸って、
みな同じ時を過ごしてきました。
それぞれに、個人差はあっても、みなずいぶん大きくなりました。

 この1ヶ月間は、どの子にとっても、決して短いものではありませんでした。
もう、あの日の入学式のときの、「ボク」や、「ワタシ」ではなくなっています。
木や花や自然というものは、一日いちにち、ほんとうに目でわかるほどに、
成長し、また変化し続けてゆくのに、人間はなかなかそうはいかない、
と思い込みがちですが、けっしてそうではありません。


 自然など、比べ物にならないくらいに、子どもたちは成長がはやく、
いろんな事柄に、子どもたちのたましいは敏感に反応しています。
とくに、3歳、4歳、5歳の心と体の成長は、人間の一生のなかで
どんなに大事であるか、はかり知ることはできない、と思います。
クシャクシャに泣いたり、ゲラゲラと笑ったり、プーンと怒ったり、
向こうに行ってすねたり、ニヤリと照れたり。


 ニンマリと喜んだり、ポーズをとって格好つけたり、どれも大事なのだと思うのです。
どれも、大人になるための、大事なステップなのです。
朝日幼稚園では、それが満ち満ちています。
たとえば、わたしたち朝日幼稚園には、園バスがありません。
そこで、登園の際は、お子さんを、お送りいただくか、歩かれるか、していただいています。
時勢からすれば、現代のニーズにそぐわない、などといわれるかもしれません。

 
しかし、「本当にそうだろうか」、と思わされます。朝日幼稚園の歩き登園を、
わたしも実際に一緒にしながら、子どもたちとしばらくの間ですが、
子どもたちの小さな歩幅に合わせて、園までの距離を歩きながら、いつも思わされます。
わたしは、「矢之助コース」なのですが、地域の方々とのふれ合いを得ながら、
そして季節を直接に肌に感じながら、
社会常識(交通ルール)を学びながら、歩いてきます。


 その中で、先頭に立ちたい子、マイペースな子、話に夢中になりすぎて
後ろ向きなってしまう子、なかなか自分からは話してくれない子、
すぐに友達の話の腰を折る子、途中でお母さんのことが思い出されて泣く子、
後ろまで気が行き届く子、それぞれの子の性格が見えてきます。
お花が咲いていれば、「これ、知ってるで、チューリップやろー」、
「ちがう、こっちはスイセンやー」などと、その日の話題が始まります
カモが、川で水草をついばんで水辺にいると、誰ともなく
「カモさん、おはよー」といい始め、しまいには大合唱のあいさつになります。
野菜屋さんの軒先に巣をつくりはじめた、つばめさんにもあいさつをして、
やっと園に到着です。タンポポさんなりに、すみれさんなりに、ばらさんなりに、
それぞれの段階で感じ、学び、言葉を発し、
それに対して先生が言葉をつないでゆきます。


 わたしは、朝日幼稚園の登園(降園)は保育である、と思います。
毎日、野外(園外)保育がなされている、のです。
園バスでピューっと過ぎてしまっては、見えないものがあります。
一緒に子どもたちと時間をかけて歩いてみないと分からない、ものが見えてきます。
それだけはありません、子どもたちの、リアルな視線が分かります。
子どもたちの素の姿が見えます。それは、園内の保育に活きてきます。


 登園したあと、わたしは園の門のところでなるべく、各コースからの登園児を
出迎えるようにしています。
遠くから園に向かってくる、先生が率いる子どもたちを見ていると、
羊飼いさん(先生)が、子羊さん(園児)を連れて園に向かってきているように、
わたしには見えて仕方ありません。
子どもたちの歩幅は短く、一見きまぐれのように、
右に左に揺れているようにも、思われます。


 しかし、子どもたちの歩みは、時間はかかりますが、じっくりと、
そして確実に一歩一歩、前へ前へと進んでいます。
わたしたちは、その小さな一歩一歩を、その小さな歩幅を、受け止めたい、
そして信じたい、と思います。
その小さな一歩からすべてが始まるのですし、だからその一歩一歩の踏み出しが、
子どもたちにとっては大事なステップとなるのです。


 そう思って門に立ち、朝子どもたちを迎えていると、
元気にあいさつをして、喜んで登園してくる、子どもたちの笑顔の輝きが、
一層まぶしく感じられます。
すべてに感謝して、神さまに祈りたい、と思います。




――天の父なる神さま。
季節は、春が過ぎて新しい季節を迎えようとしています。
あの春の日が、静かに遠のいてゆきます。
この静かな季節の流れのなかで、
朝日幼稚園の子どもたちの大事な成長の時も、
あなたに守られてまいりました。
園でなされる、すべてのことが、あなたに愛されているお子の、
健やかな成長のために用いられますように。
教師は、そのために心をくばり、思いを尽くして、
みなで力を合わせて保育にあたることができますように。
カゼをひいているお子が増えてきています。
少し、力みすぎて疲れが出て、お休みの子もいます。
どうか、早く治りますように。
みなニッコニコの笑顔で、また登園できますように。

このお祈りを、イエスさまのお名前を通して、み前におささげいたします。
―アーメン

聖句 わたしは良い羊飼い。
     <ヨハネによる福音書 10章14節>
賛美歌「うたいましょう」「てをあわせ」

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